ビジネスアナリストのゴールは「プロジェクトの完了」ではなく「価値の実現」である

プロジェクトの成功とは、一体何でしょうか。
- WBS(計画)通りに全タスクが完了した
- 不具合なくテストが終了した
- 予定通りの日に本番リリースを迎えた
これらはプロジェクト管理において極めて重要な指標です。
しかし、ビジネスアナリスト(BA)の視点では、これだけで「プロジェクトは成功した」とは断言しません。
■「アウトプット(納品)」と「アウトカム(成果)」は別物
どれほど精巧なシステムが完成し、無事に稼働したとしても、
- 現場の営業スタイルが以前と変わっていない
- データは蓄積されたが、意思決定に活用されていない
- 期待していたほど現場の業務負荷が下がっていない
このような状態であれば、事業としての価値は生まれていないからです。
PM(プロジェクトマネージャー)が「計画通りのアウトプット(納品物)」に責任を持つのに対し、
BAが責任を持つのは、その先にある「アウトカム(事業成果)」です。
プロジェクトを終わらせることは通過点に過ぎず、その先の価値が実際に実現したかどうかが、BAにとっての真のゴールです。
■BAが追うのは「価値指標」という羅針盤
BAがプロジェクトの中で常に意識しているのは、進捗率や消化タスク数だけではありません。次のような「価値指標」を追いかけます。
- 営業効率は具体的に何%改善するか
- 現場の意思決定スピードはどれほど向上するか
- 顧客体験(UX)の質は以前とどう変わるか
- オペレーションは真に最適化されているか
これらは、通常のWBSや進捗管理表には現れにくい指標です。しかし、事業が投資を行う本来の目的はこちらにあるはずです。BAは、この目に見えにくい「価値」を、具体的な「要件」や「仕様」へと翻訳し、プロジェクトを正しい方向へ導きます。
■逆算の戦略:価値実現計画(Value Realization Strategy)
BAの戦略は「どう作るか」ではなく、「何を実現したいのか」から逆算します。
- どんな価値を生みたいのか(Why)
- その価値は、いつ・どこで・誰に現れるのか(Who/Where)
- 価値が出たと判断できる「状態」は何か(Goal)
この視点でプロジェクト全体を捉え直すことで、優先順位を整理し、無駄な機能開発を防ぎます。
いわば、BAのプロジェクト戦略とは、単なる開発計画ではなく“価値実現計画”と言い換えることができます。
■BAの責任範囲をどう捉えるか
BAはPMの代わりでも、単なる調整役でもありません。
BAの責任範囲は、プロジェクトをスケジュール通りに終わらせること以上に、「プロジェクトの先にある目的(価値)を見失わないこと」にあります。
現場のニーズと経営の理想、そしてシステムの仕様。これらを「価値」という糸でつなぎ合わせるのがBAの役割です。
■おわりに
プロジェクトが終わったあとで、「結局、何が良くなったんだっけ?」という虚脱感に襲われないために。
「導入して終わり」にしないための視点が、今のビジネスには不可欠です。
当社では、価値実現を軸に据えたBAの伴走支援・育成を行っています。
プロジェクトの成功と、実際の事業価値の間にギャップを感じているのであれば、一度立ち止まって「価値の定義」から整理してみませんか。

